26 mars 2016


墨絵を始めて29年になります。
先生が亡くなって6年半、
先生には20年以上教えていただきました。

先生は92歳まで教えてくださいましたが
いつでもきちんと髪をセットしてお化粧して
センスの良い洋服とアクセサリーを見に着けて
私たちを待っていてくださいました。

初めてお会いした70代前半の時から
全然年を取らなかったので
私たちは先生を魔女と呼んでいました。
本当に、先生はいつまでも美しかったのです。

もともと美人なのです。
色白で日本人離れした顔だちで姿勢が良い。
おまけに洋服のセンスも抜群だったので
街中でもひと際目立つ存在感がありました。
最近話題になっている『Advanced Style』の
NYの素敵なおばあちゃんたちみたいな感じ。

初めて展覧会で先生にお会いした時、
日本にもこんなに素敵な老人がいるのかと
衝撃を受けました。
その上、先生の描く墨絵は幽玄でモダンで
他の誰も描かないような素敵な絵なのです。

「習うならこの先生以外あり得ない」
それで、その翌月からお稽古に通い始めました。
先生が側にいるだけ何かが乗り移って
自分じゃないような絵が描ける気がしたなぁ。

私は先生をすっかり頼って甘えていたので
先生が教えられなくなった時は
宇宙に放り出されたような恐怖を感じました。
先生なしでどうやって描いたらいいのだろう。

半年後に先生が亡くなり
私は自分だけで描かなければならなくなりました。
もう私に「それ以上描いちゃダメ」と言ってくれる
恩師はいないのです。

その年の展覧会のために
私は北海道で見た森の絵を描くことにしました。
不安を抱えながらも、いざ描き始めると
先生の声が聞こえてくるような気がしました。
まるで先生と一緒に描いているように
自然と手が動きます。

私の中にはちゃんと先生がいたのです。
先生が教えてくださったものは全部
ちゃんと私の中に入っているのだと思いました。
先生が亡くなって6年半経った今でも
私は描く時に先生の言葉を思い出します。

今日は墨絵のお稽古でした。
2人の生徒さんが素敵な春の画題を選んだので
今日は絵の具で少し色を加えることにしました。
先生は決して色を使いませんでしたが
たまには新鮮でよいでしょう。

2人とも素晴らしく良い絵が描けました。
色を使うアイデアは成功でした。
墨絵に色を加える時は分量と濃さが大切です。
今日は両方ともとてもうまくいきました。

先生、これでよかったですか?
私は良い先生になったでしょうか。
先生に教えていただいたことを
ちゃんと伝えることができているでしょうか。 

先生は応えてはくれませんが私にはわかります。
先生はきっと満足してくださっています。
だって、教えている時の私は先生そっくりだから。 

      
いつも読んでいただきありがとうございます。
ポチしてくださると励みになります♪


この記事へのコメント

1. Posted by ゆみこ   26 March 2016 22:12
ステキなお話をありがとうございます。
綺麗な方からしか綺麗な作品は産まれないのでしょうね。
先生もYURIKOさんから愛されていて幸せだと思います。
先生のセンスが生徒のYURIKOさんに伝承されていて、まさにそこで生きているんですね。
2. Posted by Yurico   26 March 2016 23:29
そうであることを願っています。
先生は私の永遠の憧れ。
私もあんな風に年をとりたいと思います。

コメントする

名前
 
  絵文字